シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「おい、チビ?」


頭の上を指でノックすれば、柔らかいものはある。

一応、張付いてはいたらしい。


………。


俺の髪、チビリスに毟り取られてハゲてはいないよな?


少しだけ嫌な予感が胸を過ぎったけれど。


大丈夫なはずだ。

汗を頬に伝えるだけの量は健在してるから。

頭のてっぺんも涼しいよりも生暖かいくらいだから、地肌が出ているわけでもねえだろう。


「おい。どうした、なに黙ってるんだよ……」


まさか、気を失っているとか?


「ぐすっ……」


微かに……玲の泣き声が聞こえた。


意識はあるらしい。

だけど元気がねえ。


「どうしたよ?」


首根摘んで、俺の目線の高さに宙ぶらり。


チビの気分に昂じているような、いつもの立派なふさふさ尻尾も、なんだかツヤハリなくして、たらりと垂れ下がっている。


「言えないよ。オスとして…それは言えない」


これが本物の玲なら、酷く翳った綺麗な顔を少しそむけ、切なげに言っているんだろうけれど、生憎俺の目の前にはシリアスさとは無縁な顔したリス。


「気になるじゃねえか。なにめそめそしてんだよ。言えって」

「言わない」


何故だか、チビリスは頑なに拒否をする。

そうなればこっちも意地になる。


「いいから言えって」

「怒るもん」


リスだから許される"もん"で、ちらりと俺を上目遣い。


「お前、今まで何度俺が怒鳴っても、マイペース貫いてきたじゃねえか。なにを今更」

「事情が…違うんだ」


辛そうに頭を垂らしたチビ。

俺はチビがなにを隠しているのか気になって仕方がねえ。



「怒らねえって。めそめそしている奴を怒るほど、俺は鬼じゃねえって」

「本当に?」


またちらりと上目遣い。

……多分、本心は言いたいんだろう。


目がキラキラしてきたような気がする。


「嘘言うかよ」

「本当の本当?」


上目遣いしたまま、首をひょこりと傾げた。

らしくねえな、このリス。


「本当の本当」

「胡桃に誓って?」


おお、すげえ…引き合いに出る胡桃って凄いモノだったんだ。


色々ツッコミ処は満載だけれど、言いたいなら早く言えばいいとイライラ始めた俺は、チビを急かした。


リス生相談を長く出来るほど、時間にゆとりもなければ俺にそんな能力も気の長さもねえし。



「ああ、胡桃に誓うから早く言えって」



するとチビは安心したような笑みを浮かべて、言ったんだ。






「怖くて……


ちびっちゃった」






ぽっ。


毛むくじゃらなのに、チビリスの頬が赤くなった気がした。