「おい、チビ?」
頭の上を指でノックすれば、柔らかいものはある。
一応、張付いてはいたらしい。
………。
俺の髪、チビリスに毟り取られてハゲてはいないよな?
少しだけ嫌な予感が胸を過ぎったけれど。
大丈夫なはずだ。
汗を頬に伝えるだけの量は健在してるから。
頭のてっぺんも涼しいよりも生暖かいくらいだから、地肌が出ているわけでもねえだろう。
「おい。どうした、なに黙ってるんだよ……」
まさか、気を失っているとか?
「ぐすっ……」
微かに……玲の泣き声が聞こえた。
意識はあるらしい。
だけど元気がねえ。
「どうしたよ?」
首根摘んで、俺の目線の高さに宙ぶらり。
チビの気分に昂じているような、いつもの立派なふさふさ尻尾も、なんだかツヤハリなくして、たらりと垂れ下がっている。
「言えないよ。オスとして…それは言えない」
これが本物の玲なら、酷く翳った綺麗な顔を少しそむけ、切なげに言っているんだろうけれど、生憎俺の目の前にはシリアスさとは無縁な顔したリス。
「気になるじゃねえか。なにめそめそしてんだよ。言えって」
「言わない」
何故だか、チビリスは頑なに拒否をする。
そうなればこっちも意地になる。
「いいから言えって」
「怒るもん」
リスだから許される"もん"で、ちらりと俺を上目遣い。
「お前、今まで何度俺が怒鳴っても、マイペース貫いてきたじゃねえか。なにを今更」
「事情が…違うんだ」
辛そうに頭を垂らしたチビ。
俺はチビがなにを隠しているのか気になって仕方がねえ。
「怒らねえって。めそめそしている奴を怒るほど、俺は鬼じゃねえって」
「本当に?」
またちらりと上目遣い。
……多分、本心は言いたいんだろう。
目がキラキラしてきたような気がする。
「嘘言うかよ」
「本当の本当?」
上目遣いしたまま、首をひょこりと傾げた。
らしくねえな、このリス。
「本当の本当」
「胡桃に誓って?」
おお、すげえ…引き合いに出る胡桃って凄いモノだったんだ。
色々ツッコミ処は満載だけれど、言いたいなら早く言えばいいとイライラ始めた俺は、チビを急かした。
リス生相談を長く出来るほど、時間にゆとりもなければ俺にそんな能力も気の長さもねえし。
「ああ、胡桃に誓うから早く言えって」
するとチビは安心したような笑みを浮かべて、言ったんだ。
「怖くて……
ちびっちゃった」
ぽっ。
毛むくじゃらなのに、チビリスの頬が赤くなった気がした。

