「なあなあ、この穴…見てみろよ!!!
あの赤いの…溶岩じゃないか!!?」
翠の声に、煌も慌てたように屈んで穴を覗き込んだ。
「本当だ!!! 櫂、真下は溶岩だ!!! この部屋、ひっくり返って溶岩の真上に止ってるのか!!? ああもう何だかわけわかんねえや!!! なあ俺達、どう抜け出すよ!!? 結局、出口塞がれてるじゃねえか!!!」
………。
溶岩ね…溶岩。
下から出てはいけない…"先入観"でも持たせる気か。
何処までも、俺の"心"が出した結論を試したいか。
面白い。
「櫂、どうするよ!!?」
「コンクリと思った音はまるで違う素材の音。
壁だと思って斬り付けたものは"無"の…空気を斬っているような感触。術も吸い込まれる。
だとしたら――
視覚に惑わされている他感覚を、まず元に戻していこう」
「あ?」
「要は…脳を"騙されている"と納得させればいい。
目に見えているものは間違いだという証拠を突きつければ、視覚的に脱出不可能な事態は、打開出来るはずだ」
俺は笑う。
「翠」
「何?」
「床を通り抜けてみろ」
「へ!!?」
翠は驚いて飛び跳ねた。
「忘れていないだろうな、神崎家で自慢したのはお前だぞ?」
「小猿が家で…? ああ、あの役立たずな超能力か!!? 俺忘れてた!!!」
「や、役立たず…」
「かどうかは、判らないぞ、煌。
さあ…やってみろ」
「は!!? 成功しても…溶岩に落ちるじゃないか!!!」
キーキーキーキー声がする。
「だったら踏ん張って浮け。お前は浮くことも出来るだろう?
足りない部分は俺達が引っ張ってやるから。
何も心配することない」
俺は笑って、青ざめる翠を促した。
「さあ……」

