シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「うん、大事な幼馴染。玲くんだって知っているでしょう? あたしと櫂は永遠以上の間柄。それがなんで玲くんとお別れになるの!!?」


「――!!? まさか芹霞、櫂への恋愛感情だけを……」


「は!!!? なんであたしが櫂に恋愛感情!!?」


「……っ!! 君は櫂が異性として好きと言うことに気づいて、皆の前で大告白をしたんだよ!!? 横須賀、覚えて無い!!?」


「覚えているよ、あたし櫂にがんばれって応援していただけだよ!!? なんであたしが櫂に、しかもそんな羞恥プレイをしないといけないの!!? 玲くん、夢見てない!!?」


「ええええええ!!!?」


「あたしの方がえええええええ!!?」



まるで互いが幽霊であったかのような、凄まじい驚きよう。

正直、私も驚いた。


演技をしていた時よりもおおげさにも見えるけれど、それこそが真実の心からの動き。


事実は、演技よりも怪奇。

……だけで終わらせてはならない危険性はあるけれど。



「……わぉ」


遠坂由香が引きつった顔でぼやいていた。


「師匠的にはよかっただろうけど、どうすんだよ、こりゃ……」



厄介すぎる。

一番メインとなるはずの愛情がまだ蘇生しておらず、現況……蘇生するのかどうかも怪しい。

元々恋愛感情だけは避けて櫂様と接し続けて12年ものキャリアがある。

更には芹霞さんの性格上……櫂様との思い出を思い出しただけで満足して、その先を望まないように思うから。

なにせ思い込んだら、どんな曲った道だろうと一直線。


いまだ紅皇は緋狭様だと気づいていない実妹なのだし。



だけど、それが芹霞さんだ。

普通のように予想出来る展開をしてくれない。


だからこそ、救われる者もいるのは確か。

その頑固な一途さが、今後どの道を突っ走るのだろうか。


それは今、考えることではない。



私の不可解な行動と、コントのような寸劇で場が呆気にとられていたその瞬間が、私と玲様が見計らっていた"隙"となりえた。


その隙を、私も玲様も見逃していなかった。



「桜ッッッ!!!!!」

「はいッッッッ!!!」


化けネコと遠坂由香を裂岩糸にて、そして玲様は芹霞さんを抱えて。


――突破開始。