「うん、大事な幼馴染。玲くんだって知っているでしょう? あたしと櫂は永遠以上の間柄。それがなんで玲くんとお別れになるの!!?」
「――!!? まさか芹霞、櫂への恋愛感情だけを……」
「は!!!? なんであたしが櫂に恋愛感情!!?」
「……っ!! 君は櫂が異性として好きと言うことに気づいて、皆の前で大告白をしたんだよ!!? 横須賀、覚えて無い!!?」
「覚えているよ、あたし櫂にがんばれって応援していただけだよ!!? なんであたしが櫂に、しかもそんな羞恥プレイをしないといけないの!!? 玲くん、夢見てない!!?」
「ええええええ!!!?」
「あたしの方がえええええええ!!?」
まるで互いが幽霊であったかのような、凄まじい驚きよう。
正直、私も驚いた。
演技をしていた時よりもおおげさにも見えるけれど、それこそが真実の心からの動き。
事実は、演技よりも怪奇。
……だけで終わらせてはならない危険性はあるけれど。
「……わぉ」
遠坂由香が引きつった顔でぼやいていた。
「師匠的にはよかっただろうけど、どうすんだよ、こりゃ……」
厄介すぎる。
一番メインとなるはずの愛情がまだ蘇生しておらず、現況……蘇生するのかどうかも怪しい。
元々恋愛感情だけは避けて櫂様と接し続けて12年ものキャリアがある。
更には芹霞さんの性格上……櫂様との思い出を思い出しただけで満足して、その先を望まないように思うから。
なにせ思い込んだら、どんな曲った道だろうと一直線。
いまだ紅皇は緋狭様だと気づいていない実妹なのだし。
だけど、それが芹霞さんだ。
普通のように予想出来る展開をしてくれない。
だからこそ、救われる者もいるのは確か。
その頑固な一途さが、今後どの道を突っ走るのだろうか。
それは今、考えることではない。
私の不可解な行動と、コントのような寸劇で場が呆気にとられていたその瞬間が、私と玲様が見計らっていた"隙"となりえた。
その隙を、私も玲様も見逃していなかった。
「桜ッッッ!!!!!」
「はいッッッッ!!!」
化けネコと遠坂由香を裂岩糸にて、そして玲様は芹霞さんを抱えて。
――突破開始。

