「はははははは」
突如高笑いを始めたのは、周涅。
「よしよし、久涅ちゃん、お疲れ様~。これで玲くんは芹霞ちゃんを諦めざるをえない。これで良心が咎めることなく、玲くんを貰って帰れま~す」
玲様の顔からは、生気が失われている。
このままだとまずい。
これが周涅の策だったのか?
しかし、久涅の様子もおかしかった。
芹霞さんが櫂様の記憶を取り戻したことについて、明らかに動揺している。それを見れば、久涅には、芹霞さんに櫂様の記憶を取り戻させるという意図はなかったようにも思えるんだ。
その表情は、自分を全否定されたかのような哀しみで。
そんに久涅を見て、周涅は愉快そうに嗤う。
「久涅ちゃん…。君の顔は……芹霞ちゃんの鬼門だったね。その顔でいる限り、もう……君は"駄目"だ」
どうしてなのか――
自分でも判らないんだ。
「いや……"ご苦労様"? 周涅ちゃんは……君の魂胆を見抜けない程、馬鹿じゃないよ?」
私は――。
「周涅ちゃんは、黄皇の代行。だから……魔方陣がある場所で、"さようなら"」
周涅が久涅に手を出す直前、その手を弾き、久涅を突き飛ばして助けてしまったんだ。
「葉山!!!?」
判らない。
判らないんだ。
だけど。
「櫂様と同じ顔で……そんな顔をするな!!」
絶望のような表情を。
――芹霞あああああ!!
芹霞さんが櫂様を忘れたことを知った、あの時のような櫂様の顔を。
そんな私のとった行動だけではなく、
「え、玲くん……。ようやく櫂の記憶が繋がった途端……なんで突然別れ話!!?」
その場の雰囲気を一刀両断する、純粋に驚いたという引っ繰り返った声を出した芹霞さんと、
「え!!? だって君は櫂を……」
涙が流れたままの鳶色の瞳をこれ以上ないというくらいに見開いて、芹霞さんの台詞がいかに意外性のあるものかを体現した玲様との会話が、場に居合わせた者達からの思考力を奪ったようだ。
その会話の流れもまた、不可解すぎて。
予想では…ここは玲様に完全に不利になる展開になるはずだった。
玲様自身、そう思っていたはずなんだ。
しかし現実、ふたりでなされている会話は――

