「俺のあずかり知らない処で、俺の意思とは無関係に勝手に俺の運命を決めて、勝手に哀れんで、勝手に蔑んで。
俺は俺の意思で生きている。他人に生かされているわけじゃない!!」
櫂様と同じ顔で。
櫂様のような強い意思で。
他人から理解されない苛立ちを隠そうともしない。
自分は道具だと言っていた玲様は、久涅になにを見ているのだろう。
「では、お前が此の場に現われた理由はなんだ? お前は現に紫堂当主の命令を忠実にこなしている」
玲様はぶれない。
例えひとときの同情があったとしても、その相手が異母兄弟だったとしても、櫂様を自らの手で追い詰め……それを笑っていた相手には変わらないから。
私だって、ぶれない。
「黄色い粉をつけて、黄幡会のマスターやディレクターと現われて。今度は堂々と五皇の姿でおでましだ。僕の捕獲は五皇の務めだとでも正当性を主張しているのか? 五皇の権威を見せられたら、僕が納得するとでも?」
久涅は答えない。
「僕が……形だけの権威に屈するとでも?」
周涅は笑うだけ。
「僕が心から従える五皇は――黒ではない!!」
玲様の口から、言葉が爆(は)ぜた。
そう、私達が崇めるのは鮮烈な赤。
櫂様の漆黒ですら吸収するその赤色の慈悲によって、私達は救われ結束を固めているんだ。
無彩の五皇は――出る幕じゃない。
「ははははは!! 啖呵切って大丈夫なの、玲くん? 今の五皇を統べるのは黄色。黄色の前にはどんな色も無力なんだよ?」
その黄色と黒色が同系の色合いとでも言いたいのか。
黄に使われる黒。
黒は黒だから無彩なのではなく、黄があるからこそ無色だと?
黄がなければ有色になりえると?
「無力なの、久涅」
今まで黙って聞いていた芹霞さんが、冷ややかな口調で久涅に聞いた。
今までの雰囲気とは違い、何だか怖いくらいの…思い詰めた表情をしていた。
今まで故意的に合わそうとしていなかった、久涅との視線を今度は真っ直ぐに見据え、毅然とした態度で芹霞さんは久涅に聞いた。
「他人の意のままに動くことが嫌なのなら、今その格好で此処にいるのは――あんたの意思?」
化けネコを抱えて、一歩前に前に出る。
「ねえ……教えて? "約束の地(カナン)"を爆破したのは、あんたの意思?」
過ぎ去りし話題がまた戻って来てしまう。
しかし誰も芹霞さんを止めようとはしなかった。

