シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「しかし何故櫂様をそこまで恨む? 悪いのは親だろう」


私の問いに、久涅ではなく周涅が言った。


「10年前、黄幡一縷の黒魔術を久涅に向かうように仕向けたからさ。それにより、櫂が呪殺されるべき運命が久涅にねじ曲げられた」


どういうことだ?


「それ……」


芹霞さんが化けネコカバンをぎゅっと抱きしめながら口を開く。



「イチルが、"ねえさん"を使ってカイカイ……紫堂くんを呪ったあの夢のことだ……」



「へえ……思い出してきているんだ、君。玲くんどうするの~?」

急に軽口に戻る周涅。


「………。なんで久涅が櫂の代わりに呪いを受ける?」

「俺が、血染め石の真実の所有者だから」


玲様の質問に答えた久涅の眼差しは、凍てつくようなもので。

憎悪がちらちらと見え隠れしていた。


それは真剣な光となり、静かに芹霞さんに向けられた。



「あいつのものは、俺のものだ」



血染め石――。

芹霞さんを守ったその石。


久涅は芹霞さんの過去を知っているのだろうか。


逆恨みした櫂様が大事にされるものだから、芹霞さんに執着するのか。

それともただ……芹霞さんに愛された櫂様に対抗しているだけのものなんだろうか。


憎悪が起因か、愛情が起因か……芹霞さんの執着の理由は私には判らない。


「だけど――」


周涅は笑った。



「五皇の試練によって、遺伝子が持つ久涅ちゃんの"早老症"の運命は書き換えられたけれど、呪殺されるという運命は変わらなかった。呪いの苦痛にのたうちまわり、体の機能が止まっても、今度は黄の印が生を縛る。これが生き地獄……」


久涅は――、


「父親は、黄幡一縷を見つけ出して解呪させようとした。だけど一縷は――死んでいた」


泣きそうな目をしていた。

櫂様と同じその目で。


「呪いは解けない。そんな時、出て来たのが――黄幡計都。黄幡家は戯曲『黄衣の王』の力を黒魔術として使える稀有な家柄。一縷ほどの力はないにしても、黄幡家最後の当主としての力はあった」


黄幡家の現当主……。



「彼の力により、一縷の呪いは"弱まった"。しかし無くなったわけではない。だから久涅ちゃんは動いているんだ、黄色い粉をつけてさ、そうだよね久涅ちゃん?」


久涅は横を向いた。


「つまり」


玲様が言った。



「黄色い蝶は……黄幡家、いや黄幡会にも関係あると言うことか」



そういう結論にもなるだろう。


「そして皇城も紫堂も、久涅ちゃんが死なないように協力してあげてるわけ。全ては――キブアンドテイクの関係。なにも久涅ちゃんのことだけに限ったわけではないけどさ」


「紫堂ということは……当主が、久涅を生かせようとしてるのか?」


思わずそう言った玲様の言葉に、


「悪いのか、俺が生きているのは!!」


久涅の怒気が強まった。