「何でそこまで雄黄に従うんだ!? 意見出来る唯一の立場にいるんだろう、お前は!! 何で刃向かわない、何で止めない!?」
玲様の声が乱れ飛ぶ。
「人間だろう、お前だって!! 紫茉ちゃんを愛しているのなら、兄であるお前がなんとかすべきだろう!!?」
「紫堂育ちのお前に、皇城のなにが判る?」
周涅の表情からは温度が一切失われていた。
「羅侯(ラゴウ)の封印に命を捧げることを"普通"の"正義"としている家に、お前の価値観を押し付けるな!!」
それなのに言葉はどこまでも熱く。
周涅という人間に不釣り合いなほど激昂している様子がわかった。
顔に出さないのは、癖なのか。
それとも――出せないのか。
感情を素直に顔に乗せることが出来ない私は、妙な共鳴を感じてしまい、同類ではないと頭を振った。
周涅と反対に玲様は至って冷静で……。
「……子供は……、羅侯(ラゴウ)の封印に関係があるのか?」
そんな玲様の言葉を、周涅は鼻で笑った。
「他人事のように言うな」
いつものように、人を見下している表情を難なく作る。
「お前が電脳世界とやらに関係していなければ、こんなことにならなかった。まず大体、お前の父親がおかしな研究などしていなければ、紫茉が巻き込まれることはなかったんだ」
研究……?
「TIARA計画……って奴かい? 人工生命の……」
口を出したのは、遠坂由香。
「そこの黒ずくめを生かせようと、そんなおかしなことを考えはじめて、それに雄黄が力を貸すからこんなことになった。
久涅をさっさと死なせていればこんなことにはなりえなかった」
それは後悔のように。
玲様の父親……。
"約束の地(カナン)"で氷皇から見せられたビデオを思い出す。
「やはり、久涅の父親は……玲様の……」
「そうだよね、久涅ちゃん。そして母親は、君が大嫌いな……」
「言うな!! あの女は母親ではない!!」
櫂様の母親。
憎んでいるのは櫂様だけではなく、その母親も?
「あれは……本当のことだったんだな…」
玲様が悲痛な表情で唇を噛みしめた。
「だったら師匠……。師匠と久涅は……」
「ああ、僕にとっても異母兄弟だ」
玲様は溜息をひとつ零した。
「櫂……」
思い浮かべているのは櫂様のことなんだろう。
櫂様がこれが事実と知れば、どんな思いをされるのか…憂えているのだろう。
あくまでご自分の心は後回し。
それ程までに、玲様にとって櫂様の存在は大きいんだ。

