シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「何でそこまで雄黄に従うんだ!? 意見出来る唯一の立場にいるんだろう、お前は!! 何で刃向かわない、何で止めない!?」


玲様の声が乱れ飛ぶ。


「人間だろう、お前だって!! 紫茉ちゃんを愛しているのなら、兄であるお前がなんとかすべきだろう!!?」


「紫堂育ちのお前に、皇城のなにが判る?」


周涅の表情からは温度が一切失われていた。


「羅侯(ラゴウ)の封印に命を捧げることを"普通"の"正義"としている家に、お前の価値観を押し付けるな!!」


それなのに言葉はどこまでも熱く。

周涅という人間に不釣り合いなほど激昂している様子がわかった。


顔に出さないのは、癖なのか。

それとも――出せないのか。


感情を素直に顔に乗せることが出来ない私は、妙な共鳴を感じてしまい、同類ではないと頭を振った。



周涅と反対に玲様は至って冷静で……。


「……子供は……、羅侯(ラゴウ)の封印に関係があるのか?」


そんな玲様の言葉を、周涅は鼻で笑った。


「他人事のように言うな」

いつものように、人を見下している表情を難なく作る。


「お前が電脳世界とやらに関係していなければ、こんなことにならなかった。まず大体、お前の父親がおかしな研究などしていなければ、紫茉が巻き込まれることはなかったんだ」


研究……?



「TIARA計画……って奴かい? 人工生命の……」


口を出したのは、遠坂由香。


「そこの黒ずくめを生かせようと、そんなおかしなことを考えはじめて、それに雄黄が力を貸すからこんなことになった。

久涅をさっさと死なせていればこんなことにはなりえなかった」


それは後悔のように。


玲様の父親……。


"約束の地(カナン)"で氷皇から見せられたビデオを思い出す。



「やはり、久涅の父親は……玲様の……」

「そうだよね、久涅ちゃん。そして母親は、君が大嫌いな……」

「言うな!! あの女は母親ではない!!」


櫂様の母親。

憎んでいるのは櫂様だけではなく、その母親も?


「あれは……本当のことだったんだな…」


玲様が悲痛な表情で唇を噛みしめた。


「だったら師匠……。師匠と久涅は……」

「ああ、僕にとっても異母兄弟だ」


玲様は溜息をひとつ零した。


「櫂……」



思い浮かべているのは櫂様のことなんだろう。

櫂様がこれが事実と知れば、どんな思いをされるのか…憂えているのだろう。

あくまでご自分の心は後回し。

それ程までに、玲様にとって櫂様の存在は大きいんだ。