情報屋と俺との間には、丸く抜かれた木目調の…喫茶店の床がある。
これに乗ってこの空間に来たらしい…そんな不可思議な状況証拠でもある。
正直俺は、喫茶店で意識が薄らいでからの記憶がなく、此処に至るまでの具体的な状況は判らない。
普通に考えて、この丸い床が俺達を運んだと考えるには、些か無理があるだろう。
ただしそれは、情報屋があくまで普通人であるならばの話。
緋狭さんが認めた案内人(ガイド)であり、破天荒過ぎる五皇が一目置く存在であるならば。
それもアリだと、黙認するしかない。
――坊、私を信じよ。
意味ありげな丸い板。
これだけが、この不可解な空間に存在する理由は何だ?
………。
この床の木目模様…?
俺は表面に手を触れると、風の力を用いて裏にひっくり返した。
「櫂、どうしたよ?」
隣で煌が、不可解な顔をして俺のやることを眺めていて。
………。
間違いない。
「こっちが表だ」
「あ?」
「今まで、俺達が上から踏み付けていたものは、喫茶店で踏み付けていた床の"裏側"だ」
煌が白目で考え込んでいる。
そして――
「つまりよ…?
上や横の壁に異常がなかった。
だとすれば…
――下か!!!?」
俺は煌の言葉に呼応するように、木目調の円板を足で横に蹴飛ばし、視界から遠ざける。
今まで板があった場所には――
穴が…開いていた。
「待て待て!!! 下が出入り口なら、下から上に上がってきたのか!!? 俺達…あの木の円盤に乗って、下からエレベータみたいに!!? だったら此処、天界か!!? それとも…実は死んでいて、天国とか!!?」
「え!!!? だとしたらワンコ!!! 裏世界って、あの世!!?」
目の前で真っ青な顔をする2人。
俺は薄く笑って首を左右に振る。
「違う。だから逆なんだ。
『リバーシブル』。
この空間では――
ひっくり返ることに意味がある」
「「は!!!?」」
煌と翠は同時に声を出した。
俺の目に映る物…
何処までを信じ、何処までを弾くか。
――己の"心"を信じよ。心は嘘をつかぬ。
俺の心は――

