「今、皆の者を外に行かせた!! これで少し時間稼ぎが…」
駆け込んでくる夢路の声。
「0と1の配列が固定化してきた!! 増殖続けるのは……やばい…あの呪文だ!!! 本家本元からの…妖蛆の呪文だ!!」
本家本元……?
玲の父親が叫んで、キーボードを猛速度で叩き出す。
「結界を……ぐっ…」
「緑皇、動くではないわ!! 妾に掴まれ!!」
「何で…このタイミングで…。あちらには、"あいつ"が……」
「煌」
すると煌は既に偃月刀を用意していて、俺に頷いた。
さすがは俺の護衛役の幼馴染。
俺の考えは、伝わっていた。
そして、少しも怯むことなく。
「夢路。あのスクリーンを消していけば、いいんだな?」
「は? 無謀だ、あれは……」
俺の強みは、"約束の地(カナン)"で体験していること。
あの向こう側の"なにか"を倒せばいい。
「あれは…物理攻撃は効かない!!」
……どうやら、少し勝手は違うようだけれど。
すぐに軌道修正してやる。
「銃を持っているか…」
苦しげな声で、緑皇が言う。
「あれが…有効だ。もしもの為に用意したのが…功を奏するか……」
それは回転式拳銃。
煌も翠もまだ身に付けていた。
「僕もばっちし!!」
……レイのものはどうなんだろう…?
レイも…戦う気らしい。
「矢でも銃でも、どんとこい!!」
勇ましい。
さすがは俺の従兄を言い張ることだけはある。
「おお、我も戦うぞ!!」
「ゴボウちゃん、頑張ろうね」
翠も護法童子も、戦意を失うことなく。
「いいか、目的は二つ。この世界の被害を食い止めること。出来るだけ早く、敵を抹殺すること。
敵は素早い。だが、俺達だって素早さは負けない。あのゲームを潜l抜けてきたんだ。
あのスクリーンから何が出て来るか判らない。だが、動じるな。お前達はひとりじゃない。そうやって今まで来たことを思いだせ」
全員が一同に頷いた。
「櫂」
その時緑皇が俺の名を呼ぶから、俺はその顔に振り返る。
緑皇は――
「この世界を……守ってこい。これがお前の"初陣"だ」
緑皇が微笑んでいたんだ。

