だから僕は、威嚇始めた化けネコ横目に、
「最後まで先導して案内して下さい」
そう強い語調で言うと、彼女は何故かたじろいだ。
彼女は――
「私の案内はここまでよ」
動かない。
動こうとしない。
まるで見えない壁でもあるように。
ピタリと動かない。
「……。桜」
「はい、玲様!!」
放たれる裂岩糸。
紫茉ちゃんがいるとされている方に行き着く前に、
「糸が光って燃えた!!?」
それも不自然な炎の色で。
黄みがかった暗い赤茶色。
まるでそれは――。
「……私達をハメたのか!!?」
桜から自然と出る低い声に、彼女はただ首を横にふるばかりで。
「こんなこと…聞いてない。聞いてない…!!」
「じゃあ何を聞いていたというんだ!!?」
この炎の色は――、
「彼女は俺の指示で此処に連れただけ。彼女の意思で、紫堂当主ではなく、俺を選んだんだ~」
赤銅色だ。
後ろを振り返った先にいたのは――。
「七瀬…周涅…!!!?」
炎の色を纏う…氷皇と瓜二つの男だったんだ。
「ああ、さっきぶりだね~。葉山ちゃ~ん」
手をひらひら振られた桜が、僕を庇うように前に出る。
周涅に最初の怒声を浴びせたのは――
「貴方、玲になにをしようとしたの!!?」
美咲さんだった。
「別に~? 君みたいに、役立たずな子宮をとってそこに"別なもの"を入れようとした…なんて非道なことはしないよ? だって周涅ちゃん、皇城だからね~」
何処までも、氷皇と同じような軽い口調で。
今……なんて?
美咲さんの子宮がなんて?
"皇城だからね~"
誰が、美咲さんになにを?
赤銅色の瞳が僕に向けられる。
微かな……憎悪すら見えるその瞳を僕に向けておいて、
「あっちで君が捕まらないから、焦っちゃった~。読み違えなんて周涅ちゃんの失態~。ねえ、再会記念に、ちょっとお茶しない?」
顔と口調がまるで合わないまま、その手は――。
「うぐっ…!!!」
美咲さんの腹に入り、彼女はふたつ折りになって何かを床に吐いた。
「つまらないものを"飼わず"、吐き出しちゃえば~? そしたら君は楽になれるじゃないか。そうそう、その調子。
美咲ちゃんは周涅ちゃんの言うこと聞いてくれたから、約束通り…周涅ちゃんがそれを一掃してあげるよ。こうしてプチプチ足で潰してさ。だから吐き続けてよ、はははは~」
積もり積もるそれは――。
「「蛆!!!!?」」
芹霞と由香ちゃんが同時に震えた声を上げて、互いに抱きついた。

