何だか素通りできないものを感じた僕は、じっと彼女の後姿を眺めていたのだけれど、そんな時、僕の服の裾をぎゅっと握る芹霞に気づいて振り返る。
「玲くん…気になるの?」
不安げな顔。
「元カノサン…やっぱり忘れられない?」
………。
可愛いな…。
どうして可愛いことを、突然言い出すんだろう。
さすがに由香ちゃんが三日月目で、こっち見てるから何もしないけれど、ふたりきりなら絶対キスの嵐。
「君が思っているのとは、違う意味でね。僕の愛情は…"彼女"サンだけのものだよ?」
くすりと笑った僕に、芹霞の顔が赤くなる。
僕の見たい反応を裏切らない芹霞に、この場に不釣合いなまでに心が躍る。
「芹霞は不安になることは何もない。堂々と僕の隣にいて」
今だけではなく、この先もずっと――。
そこまでの気持ちを読み取ってくれたかどうかまでは不明だけれど、芹霞は喜んだ顔で大きく頷いた。
そう、何があっても僕は芹霞への愛を貫く。
「むふ……?」
散らせてたまるものか。
「むふふ……?」
………。
「……なに、由香ちゃん」
「いや、いい感じだなって。むふふふふふ~」
こうして、応援してくれる人もいるし…?
ただの好奇心…じゃないはずだ、うん。
やがて道は一本化し、あとは緩やかな螺旋状となり、中心部に向けて僕達は進んでいった。
「クチュン、クチュン…」
相変わらず化けネコのくしゃみはとまらない。
「化けネコの唯一誇れる美顔が…ハナタレ…」
「神崎みたいに鼻にティッシュ詰めようよ。カピカピになっちゃうしさ。両側…これでいいかな」
「あ。ミサイルのように飛ばしちゃいましたね…。気に入らなかったらしいです…」
「「鼻からミサイル…化けネコの新たな技か!!?」」
三人は苦労しながら、化け猫のお守りをしているようだ。
そして見えてきた突き当たり。
右方向だけ、明るい道が示されているようだ。
「終点よ。さあ、目的地はあの明るい右側」
原始的な洞窟の風景は此処で終焉を向かえ、彼女が促した先には、まるで異空間のような…だけど僕らにとっては、何の変哲もない、ピカピカに磨かれて整備された普通の建物の白い廊下が現れたんだ。
「そこから先が、研究所と施設を繋ぐ通路よ。そこの真ん中の部屋に、お探しの少女はいる。早く行くといいわ」
彼女は、指をさすだけで足を進めようとしなかった。
おかしい。
僕達は研究所だといわれている部分を地下に降りてきただけで、研究所らしきものは目にしていない。
しかしこの先にあるのが連結通路というのなら、研究所らしきものを横切ってもよかったのではないだろうか。
ここに至る直前は回りこむような一本道。
だとすれば、施設から研究所へ行きたい人達は、いちいちあの道を通って向かっていると?

