髪がぐちゃぐちゃになったのが気になるらしい美咲さんを先頭に、勝ち誇った顔の化けネコとその仲間達が歩く。
桜に運ばれている化けネコ様には、女の子ふたりが頭や手を撫でて"よしよし"するという、この"ネコ可愛がり"。
もういいよ、化けネコ主役で。
もう妬く気も薄れた。
しかし――。
このセキュリティーは普通ではない。
何より攻撃性を備えていると言うことは、その必要がある建物だということ。
更にはひらひらと飛んでくる蝶を誘う蜘蛛の巣の如く、こんなセキュリティーとは無縁な古ぼけた建物を演出しておいて、外敵を弾くモノは物騒過ぎて。
もしも此処に、相殺の力を持たない僕が単独で忍ぼうとしていたら、どうなっていただろうか。
出直しただろうと思う。
――言っておくけど、建物内の侵入者に対する設備は、半端じゃないわ。
あながち、美咲さんの言葉は間違っていないらしい。
更に内部に入ってみれば、僕が感じる電気の量は相当なもので、相応のシステムが組まれていることが簡単に予想出来た。
ここのセキュリティが自警団に情報を流す巨大サーバーと連携しているのか、或いは…サーバーがここの施設の全システムを管理しているのか。
しかし同時に虚数の存在も感じる。
ここの0と1を使えたら。
ここの0と1を電脳世界に送り返せたら。
しかし虚数の反撃を思えば、少し様子を見ておく必要がありそうだ。
0と1と虚数は…表裏一体の間柄。
一瞬にして、0と1は滅んでしまうかも知れない。
むざむざ消させてたまるか!!
僕は…0と1の破壊者ではないんだ。
そんな強い意思を持ち、ひたすら歩いていく。
まるで石で出来た洞窟を歩いている気分だ。
洞窟の迷路。
錯綜させるのは、外部の者達を中に入れさせない為なのか。
もしくは――
内部の者達を外に出さない為なのか。
分岐する道はあるけれど、美咲さんは躊躇なく突き進む。
「これ…あっちに進んだらどうなるんだい?」
由香ちゃんの問いに、
「生きているうちに出られるといいわね」
美咲さんは淡々と言った。
「大げさな。そこまで巨大な建物でもありませんし、仕掛けがあるとしても、迷路であるならば…戻れば元に戻れます」
正論と思われる桜の言葉を、美咲さんは軽く一蹴した。
「元の場所に戻れればね。目だけをあてにしない方がいいわよ? 何で…緩い坂道になっていると思うの?」
坂道…?
僕は小脇の石を転がしてみた。
コロコロココロ。
下り坂だったらしい。
「ということは、地下に拡がる施設?」
美咲さんは笑って肯定する。
「表向きは別のダミーに案内されるけれど、実態は隠されているの。それは責任者以外は、正確な場所は知らない。だから貴方達が初めてその場所への道を目にしているのよ」
確かに僕は、目隠しを連れられてきた時、カートのようなものに乗せられて、かなり移動した記憶はある。
自分の足で歩いていないから、坂道だったかどうかまでは判らなかったけれど。
美咲さんの裏に紫堂当主がいるのなら、何で今、僕にそこへの道程を開示したのだろう。
何で今まで、その実験場所を隠していたのだろう。
何で今――?

