シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

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『アレート製薬 薬理研究所』


鬱蒼とした木々に埋もれた建物…それが第一印象だった。

植物は目や精神を癒す効果があるけれど、この植物に限ってはそんなリラックス効果を求めているというよりも、隠蔽の意味の方が強いと思う。

外壁は枯れかけた蔦に絡まれ、汚く変色した古びて見えるものの、よく見れば所々不自然で…それが人工的な"擬態"を施したものだということはすぐに判った。

わざわざそこまでするというならば、隠したいものがあるということなのだろう。


ある種それは判りやすくて、笑いが込み上げてきた。


――まずは紫茉ちゃん達と会いたい。


芹霞の要望に誰もが頷き、彼女が朱貴と共に居るとされている処に、美咲さんが案内してくれることになった。


――更正施設と研究所の中間にあたる部屋に居るわ。研究所の入口からが近いから、そちらから入るわよ。


もしも美咲さんの言葉が真実ならば、何故この施設内に紫茉ちゃん達はいるのだろうか。

僕達が居るからと、連れて来られたのだろうか。

誰に?


まあ…人の良すぎる紫茉ちゃんのこと、のこのことついて行ったのを、朱貴が慌てて追いかけて来た…パターンもありえそうだ。


紫茉ちゃんの気は追えるだろうか…。


そう思い集中して気配を探れど、色々な気配が分散されて集中が乱される。


更正施設には沢山の少年少女が居るはずで。

その気配に邪魔されているらしい。


しかしこれらの気は――。


「玲様」


小さい声で桜が言った。


「あのあたり……」


こっそりと指さしたのは、筺(はこ)のような建物。

それは研究所と更正施設というふたつの建物の間に位置するところで。


ふたつの建物が何処で繋がっているのか、地上からは確認出来なかったから、もしかして地下で繋がっているのかもしれないけれど、あんな真っ正面に…確かにおかしな建物ではあるけれど。


「――っ!!?」


風が吹いた途端、尋常ではない冷気が、僕の腕を鳥肌にさせた。


これだ。僕が感じた、普通ではない気配の正体は。


それは瘴気にも似ているけれど、厳密に言えば、瘴気となる一歩手前の…人としての怨恨とか悪感情が昂ぶったようなもの。


それは昔僕が、"侮蔑"というもので味わってきたモノにも近い。


桜の顔も警戒に強張っていて、桜の肩にかけられている化けネコも同じくそちらを見つめて、低く唸っていた。