「朱貴が、黄幡家について語ったことがある。黄幡家は、羅侯(ラゴウ)の力で栄えた呪術師の一族だと」
だから、どの程度の血の濃さがあるのかは判らないにしても、黄幡家の姓を戴くのであれば、術を使えて不思議ではない、と玲くんは言う。
あたしが計都に、まだ懐疑的だったのを見越されたのか。
続けて玲くんは言う。
「更に朱貴曰く、"産まれた双子は力は強いものの、精神か肉体かに…異常が出る。曰く付きの…滅ぶ寸前の一族"、だと」
異常な双子…。
"ねえさん"は、力が強いイチルの双子で、異常者だというの?
それとも異常者は…イチルの方?
双子という言葉に、久遠を思い出してしまった時、クオンの瑠璃色の瞳と目があった。
――なんだよ、せり。
あたしは黙って、指で優しくその目を閉じさせた。
久遠達を異常だとは、言わせない。
「玲様」
桜ちゃんが、神妙な顔をして言った。
「計都が術者であるのなら、イチル人形に拘りすぎているような気がしませんか? そこに…イチルに関するメッセージがあるのなら、計都はイチルの何かの"意思"を引き継いでいるのではと」
「メッセージ…ね。確かに、惑わせるだけで、攻撃能力や模写能力が優れていたという感じはないな。どこか歪で稚拙で不完全で、まるで見つけてくれとばかりの、偽者の証拠を宿して…間違い探しのゲームをしている感じはあるね」
イチル人形…。
イチルからのメッセージ?
それを計都が人形を通して、伝えようとしているの?
「だけどさ、"マスター"はイチルの生まれ変わりなんだよね? 言いたいことがあるなら、マスターが言えばいいんじゃないか? 回りくどい方法とらなくてもさ」
由香ちゃんが言った。
「ん…。そうだよね。なんかおかしいな、黄幡会の上層部は…」
玲くんは険しい顔をして、遠くを見つめるように目を細めた。
「芹霞さん、イチルとは結局どうなったんですか? 昔」
「それがよく判らないの。イチルが"ねえさん"を殺した後、気がついたら家で寝てた」
「芹霞、イチルが何処に連れたのかは、記憶ある?」
「何だか洞窟みたいなところ。沢山部屋があって、何かがぐつぐつ煮えてて。それで…犬の死骸もあった」
「また、犬の死骸…か」
「玲様…七不思議と何か関係が?」
玲くんと桜ちゃんは顔を見合わせた。

