シンデレラに玻璃の星冠をⅢ




「師匠が"約束の地(カナン)"に行ったのも、そもそも凱を使ったのも、ディレクターの脚本どおりなのかなあ。そう考えれば、紫堂当主と久涅が爆破させたのも、彼の意図どおり? 仲間?」

「紫堂当主は切れ者で有名なんだ。だから黒皇たる久涅を使うことは、まあ…現実的にありとしても、彼が計都に使われたというのが、どうもな…。計都が当主に勝っているとはどうも考え難いんだ。爆破動機が、計都に弱味を握られてとか、紫堂にとって好条件を突き付けられたから…であったとしても、それに当主が動くことが変だ。爆破だけなら、久涅だけで十分。

彼がわざわざ"約束の地(カナン)"に出向いたのは、櫂に固執して個人的に動いたからと考える方がしっくりくる。息子ごと爆破を見届けに来た…。残酷過ぎる話だけどね」


端麗な顔は悲痛な翳りに覆われた。


「それから。朱貴曰く、黄幡会は羅侯(ラゴウ)を巡って、教義解釈上皇城とは対立関係にある。

…さっきも言ったけど、凱の立ち位置は特殊だから、彼の行動が皇城の意思とは言えない。

ただ…もしも計都の脚本どおりで、それに僕達も動かせられていたのなら。もしも見えない敵にまで関係していたとしたら。僕達のことを何も知らない輩に、いいように扱われ、見くびられたことが腹立たしいよ」

玲くんは怒りをぶり返してしまったようだ。

あたしは馬鹿だから、脚本とかそんなの考えられないし、こう動いて貰いたいと思っても、相手は心を持つ人間、思い通りに動くものでもないし。

だけど計都が、全ての動きを把握して脚本を作ったというのなら、まるで神様だ。

頭のいい玲くんでさえ、思い通りにいかない現状に、もがいて戦い続けている。

計都は…玲くん以上の頭脳があるということになる。


ダサダサの服を着て、もさっとした…あの男。

時折美形にはなるけれど、あたしの中では印象が薄い。

輪郭がすぐに消えてしまう、それが特徴と言えば特徴の男。

どう思い返しても、頭がよさそうな印象はない。


彼が、カリスマ的な一縷の義兄であり、黄幡会の重鎮である上、イチル人形で術を使えるということがまったくもって信じられない。