「ねえ師匠…。黄幡会と自警団が挑発していたとしたら、あの見えない敵は何なんだろう? 前は皇城家へ行かせる為の誘導だったろう? だったら今は…更正施設への誘導かな? あれ…だけど元々ボク達は施設に行こうとしてたんだし…あれれ? 追いかけられる意味はないね」
由香ちゃんは首を傾げた。
「玲様、周涅が首謀者で…玲様捕獲に失敗したから、今度は見えない敵を使って捕獲に乗り出した…というのはどうでしょうか」
「ということは、見えない敵は皇城側だと、桜は考えているんだね?」
「今回の状況を思えば。それが時間的にも自然かと」
玲くんは腕組みをして考え込んだ。
「ね、玲くん。そういえばあたし達がお台場からヘリで"約束の地(カナン)"に向う際にも、凱も見えない敵を指揮してたんだよね? やっぱ皇城じゃないの?」
「……。凱の立ち位置は微妙だ。翠の護衛役でありながら、その任務より元制裁者(アリス)であることに拘っている。しかも皇城に"飼われている"ことを快く思っていなかったように思える。
その凱が、皇城の見えない敵を何で統率していたのかも疑問だ。しかも今、周涅と敵対しているとなれば。途中で凱が裏切ったのか?」
「特別…周涅が驚いているようにも思えませんでしたが…。むしろBR001が居たことに驚いていた気がします。"ヨウシュは裏にいる。もうすぐ…"時間"だ"とBR001は言ってましたが。ヨウシュって何でしょう?」
桜ちゃんが答え、玲くんはまた考え込んでしまった。
「ねぇ、見えない敵というのはどんな感じなんだい? ボクにはただ移動道具と武器しか見えないんだけれど…モンスターとかじゃないの? 人間なのかい?」
「私が戦っている限りでは、怪物(クリーチャー)というより人間相手の気がします。状況によってその強さはまちまちですが、強敵というものでもありません。気配を敵の輪郭として掴めれば、武器を持ってしても然程脅威ではありません。
そう考えれば…。仮に見えない敵が皇城側のものだとして、玲様捕獲の目的があったのだとしたら。過去私達によって負け続けているはずのそんな者達をまた差し向けなくともいいかとも思いますね。あの敵100人より周涅ひとりの方が遙かに強い。
それに皇城には位階制度があり、周涅ほどではないけれど、生身の人間が術を使って暗躍出来る。位階がある人間が私達の敵として現われたのは、初期の皇城翠だけ。それも…私怨で。
何の為に見えない奴らばかり向けるのか…よく判りませんね」
「ただ…」
玲くんは口を開いた。
「武器は、進化してるんだよね」
あたしは思い出す。
最初は普通の銃器類だった。
それから直ぐにレーザーみたいなものを放つ黒い万年筆となり、それが虚数を放って爆発出来る金の万年筆に変わった。
そして今や銃は標準使用だ。
虚数を出してたらしいデコトラも、あの"ねえさん"も、武器に含めるなら実に多種多彩。
「それを放つ形態問わず、虚数の威力も上がり、"成長"している。何故武器の根底が、"虚数"だ?」
玲くんは、鳶色の瞳をうんと細くして言った。

