「とりあえず、百合絵さんが電話できる状態にならない限り、車は望めないね。百合絵さんが何処にいるのかも判らないし。繋がったら儲けものくらいな感じで、移動は僕達でどうにかしよう」
「玲様。手っ取り早く更正施設に行くには、わざと自警団に捕まってみるのも手かとも思います。全員ならば、何とかなるかと」
「ん…僕もそうも思ったけど、その自警団が…いないんだよ。塾に行く時はいたのに、芹霞や桜と合流してから、派手に戦っている最中も、まるで姿を現わさない。丸きり無視だ。腹立たしい程」
そう言えば…確かに、自警団は出てこない。
あたしと桜ちゃんが自転車で裏道ばかり通って水道橋に来る時にも、沢山の自警団がそれを目敏く見つけて追ってきていたんだ。
それが、大通りであれだけ大人数で派手に騒いでも、まるで姿を現わさないのは、確かに異様。
玲くんの最高ランクの免罪符のおかげ…と断定するには、あまりに見事過ぎる完全スルー。
あの携帯電話みたいな小道具で、データ照合ぐらいしてくれたっていいじゃないか。
……慣れとはおかしなもので、それがなければ寂しい心地にもなってしまう。
「自警団に…命令が出ているんじゃないかな。僕達を更正施設に連れるな、無視しろと」
嘲るような玲くんの声が風に乗った。
「師匠、やっぱり、更正施設に何か"秘密"があるから?」
「ん…。絶対的に遠ざけるつもりなら、もっと方法があると思う。それに過去何度も、僕達は自警団に絡まれつつも、更正施設送りになるのを回避してきたんだ。ここまであからさまな無視は、意図がある気がするんだ。"来たいなら自力で来い"…むしろ挑発されている気すらしてくる」
玲くんは、怜悧な眼差しをあたし達に向けて、続けた。
「自警団を操る…黄幡会に」
それは罠だということだろうか?
少しばかり、寒気を感じた。

