シンデレラに玻璃の星冠をⅢ




「お前を犠牲に、神崎芹霞を望んだイチル。お前の身代わりとなった人形を犠牲に、神崎芹霞を望んだお前。無意識だったとはいえ、お前のしたことは"食われる"ことで儀式を成り立たせた。だから怒ったイチルは最後に術をかけた。名前を呼ぶことで儀式が失敗したのなら、名前を呼ばずに儀式を成功させようとした」


男は淡々と言い、俺を指さす。


「お前が投げ付けた血染め石。イチルは、その真なる所有者に、苦しんで死ぬようにと…呪いのような術をかけた。奇形となって育った…"姉"を犠牲に」


姉…だったのか。

そう言えば、久遠が黄幡家には奇形の双子の片割れが生まれやすいと言われたような気がする。


犬…のような雰囲気の奇形だった。


魔術家系だった黄幡家。

その威力はよく判らないけれど。

少なくとも――。


「運命は、血染め石の所有者を久涅とみなしていた。だから…お前が受けるはずの呪いを、嬲られるように久涅が受けることになったのだ」


この男が俺にこんな眼差しを向けるくらいは、強いものだったのだろう。


「久涅が一体何をした? 遺伝子異常の策もないまま、寿命も尽きようとしているあいつは、勝手に石を奪われて瀕死となり。その石の所有者だとそういう時ばかり持ち出されて、運命までも奪われて。美由紀を奪ったあいつの息子は、本来久涅が歩みべき道を進み、のうのうと生きている。私はそれが許せなかった。必ず久涅を、久涅として生かしてやると誓った」


父親として、男としての執念。


「そして…玲を使うことを思いついた。電脳世界に近い処にいる玲。あいつであそこまでの力があるのなら、その子供は…より強い力があるはずだと思った」


何だろう、すごく嫌な予感がするんだ。


語るのは玲の父親。

その口から語られるのは、道具としての息子。



「それが…『ティアラ』計画の始まりだ」


俺は約束の地(カナン)のことを思い出す。

遠坂の持って来た青いノートパソコンの中に入っていたという、氷皇が見せた、膨大な玲のデータの記録。

その頻出文字の頭文字を合わせて…『TIARA』。


T 円環(TORUS)
I 模倣(IMITATION)
A 増殖(AUGMENTUM)
R 複製(RUMINATIO)
A 寄生(ASSECLA)



そんなよく判らない実験を玲にしていたのは――


「お前だったのか」


実の父親だったとは。