満月。
犬の死骸。
大根。
そして――。
――芹霞ちゃああああん!!
「戯曲『黄衣の王』の内容を知り、強力な双子の魔女(ウィッチ)を生み出す黄幡家の…最後の魔女に、何を願った?」
化け物。
そうあれは――。
「俺が願ったのは…」
――邪魔なのよ、カイカイ。私は芹霞ちゃんだけいればいいの。だから…。
「願ったのは――」
――死んじゃって?
四つん這いで寄ってきた…三つ足の化け物。
大きな牙を剥いた口、血走った目。
まるで犬のような。
――さあ、芹霞ちゃん。私とずっとずっと一緒にいよう? 運命よ。
――その為の儀式の"イケニエ"に、カイカイがなってくれるから。
――ふふふ。カイカイを食べちゃって? "ねえさん"。
走ってくる…"ねえさん"と呼ばれた化け物。
泣き叫ぶ芹霞。
宙に飛ぶ…オッドアイのイチル人形。
俺から転がり落ちた…守り石。
その頃は、意味を知らなかった…母親から持たされただけの…血染め石。
それを手に握りしめ、俺は叫んだ気がする。
パニックになった頭の中で、どうにかして…生き伸びようと。
そしてずっとずっと芹霞と一緒にいる為に。
イチルに渡さない為に。
「『ぼ、僕はカイカイじゃない。これがカイカイだ!! これを食べろよ!!』」
俺はイチル人形を化け物に投げ付けた。
頭から貪られる人形。
――やめて、ねえさん!!
怒り狂うイチル。
「『芹霞ちゃんは渡さないッッ!!』」
確か…そう言って、イチルに血染め石を投げ付けた…気がする。
しかし――。
俺の記憶はそこまでで。
――坊、大丈夫か?
気づいたら…緋狭さんが顔を覗き込んでいたような気がする。
あの時も、緋狭さんが…助けてくれたのだろうか。

