シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


満月。

犬の死骸。

大根。


そして――。


――芹霞ちゃああああん!!



「戯曲『黄衣の王』の内容を知り、強力な双子の魔女(ウィッチ)を生み出す黄幡家の…最後の魔女に、何を願った?」



化け物。



そうあれは――。




「俺が願ったのは…」



――邪魔なのよ、カイカイ。私は芹霞ちゃんだけいればいいの。だから…。



「願ったのは――」



――死んじゃって?




四つん這いで寄ってきた…三つ足の化け物。

大きな牙を剥いた口、血走った目。

まるで犬のような。



――さあ、芹霞ちゃん。私とずっとずっと一緒にいよう? 運命よ。

――その為の儀式の"イケニエ"に、カイカイがなってくれるから。

――ふふふ。カイカイを食べちゃって? "ねえさん"。



走ってくる…"ねえさん"と呼ばれた化け物。


泣き叫ぶ芹霞。

宙に飛ぶ…オッドアイのイチル人形。

俺から転がり落ちた…守り石。


その頃は、意味を知らなかった…母親から持たされただけの…血染め石。

それを手に握りしめ、俺は叫んだ気がする。

パニックになった頭の中で、どうにかして…生き伸びようと。


そしてずっとずっと芹霞と一緒にいる為に。

イチルに渡さない為に。



「『ぼ、僕はカイカイじゃない。これがカイカイだ!! これを食べろよ!!』」


俺はイチル人形を化け物に投げ付けた。


頭から貪られる人形。


――やめて、ねえさん!!


怒り狂うイチル。



「『芹霞ちゃんは渡さないッッ!!』」



確か…そう言って、イチルに血染め石を投げ付けた…気がする。



しかし――。

俺の記憶はそこまでで。


――坊、大丈夫か?


気づいたら…緋狭さんが顔を覗き込んでいたような気がする。

あの時も、緋狭さんが…助けてくれたのだろうか。