シンデレラに玻璃の星冠をⅢ




「血染め石は俺の守護石だ。守護石は持ち主が生きている限り、ひとつしか存在しない。そういう定義(ルール)だったはずだ」

「ああそうだ。だから今、久涅は石を持っていないだろう?」

"今"

あの石が、元来人の物だというのなら。


「ならば何故過去俺はそれを持っていた!!?」


知らず知らず、俺の声は荒げられていく。


芹霞を守ることが出来る血染め石。

あれがあったから藤姫のような輩に芹霞を奪われた。

だから唯一それが使える俺だけが、芹霞を守ってきたんだ。


そう俺だけが。


全ての元凶であり、今の俺の存在理由である…そんな石。

あれは俺のものであるはずなのに。


久涅のものだというのなら――

もしかすると芹霞を守れる特別な男は、久涅だったかもしれないということ。


違う。

そんなのは俺は許さない。


俺が血染め石を持っているのは、運命だからと信じる。


例え女々しいと言われようと。


「もと元老院、藤姫は、石の名前に興味を覚え、それが秘めた闇の力の開示を求めた。だが、素人同然の久涅の力では、藤姫を満足出来なかった。久涅は血染め石を守護石に選ぼうとも、闇の力を発揮出来なかった。普通であれば適性がないと嘲笑されて終われたものの…紫堂に属しない身でありながら、その石を使える者が現われた」

「誰だ?」




「現各務家当主、各務久遠」





男は言った。




「久遠…?」


ああ、そうだ。

忘れていたけれど、確か最初に訪れた"約束の地(カナン)"にて、そんなことを聞いたはずではなかったか。

血染め石…闇石を操れると。

しかし思えばあいつの守護石は――。


「あの男の守護石は金緑石(アレキサンドライト)でありながら、血染め石も使えた」

「確か久遠だけではなく…」

「ああ、その家族である"死人"も使えた。だからこそ闇の扉があった」


この男が情報を知り得るのは、ここで表の情報を仕入れているからなのだろうか。


「生者として闇を扱えるのは、基本血染め石を司れる者のみ。それ以外は闇属性…死んでいる者でしか、その一端に触れられぬ。五皇ですら、闇の統制は難しいのだ。血染め石だけは扱えぬ」

ああ、緋狭さんもそんなことを言っていた筈だ。

だからこそ、俺の力が必要なのだと。


「しかし久遠は、生きた身でありながら、血染め石を使用して闇の制御が出来た。しかも…初見だ。白皇が後継者にしたい理由のひとつとして、その類まれな力を元老院に藤姫に披露させた。そんなことが出来るのは、普通はありえないのだが」


さすがは――

五皇がひとり白皇の後継者候補だった、天才各務久遠…ということか。

悔しいけれど、その力は認めねばならないか。