「血染め石は俺の守護石だ。守護石は持ち主が生きている限り、ひとつしか存在しない。そういう定義(ルール)だったはずだ」
「ああそうだ。だから今、久涅は石を持っていないだろう?」
"今"
あの石が、元来人の物だというのなら。
「ならば何故過去俺はそれを持っていた!!?」
知らず知らず、俺の声は荒げられていく。
芹霞を守ることが出来る血染め石。
あれがあったから藤姫のような輩に芹霞を奪われた。
だから唯一それが使える俺だけが、芹霞を守ってきたんだ。
そう俺だけが。
全ての元凶であり、今の俺の存在理由である…そんな石。
あれは俺のものであるはずなのに。
久涅のものだというのなら――
もしかすると芹霞を守れる特別な男は、久涅だったかもしれないということ。
違う。
そんなのは俺は許さない。
俺が血染め石を持っているのは、運命だからと信じる。
例え女々しいと言われようと。
「もと元老院、藤姫は、石の名前に興味を覚え、それが秘めた闇の力の開示を求めた。だが、素人同然の久涅の力では、藤姫を満足出来なかった。久涅は血染め石を守護石に選ぼうとも、闇の力を発揮出来なかった。普通であれば適性がないと嘲笑されて終われたものの…紫堂に属しない身でありながら、その石を使える者が現われた」
「誰だ?」
「現各務家当主、各務久遠」
男は言った。
「久遠…?」
ああ、そうだ。
忘れていたけれど、確か最初に訪れた"約束の地(カナン)"にて、そんなことを聞いたはずではなかったか。
血染め石…闇石を操れると。
しかし思えばあいつの守護石は――。
「あの男の守護石は金緑石(アレキサンドライト)でありながら、血染め石も使えた」
「確か久遠だけではなく…」
「ああ、その家族である"死人"も使えた。だからこそ闇の扉があった」
この男が情報を知り得るのは、ここで表の情報を仕入れているからなのだろうか。
「生者として闇を扱えるのは、基本血染め石を司れる者のみ。それ以外は闇属性…死んでいる者でしか、その一端に触れられぬ。五皇ですら、闇の統制は難しいのだ。血染め石だけは扱えぬ」
ああ、緋狭さんもそんなことを言っていた筈だ。
だからこそ、俺の力が必要なのだと。
「しかし久遠は、生きた身でありながら、血染め石を使用して闇の制御が出来た。しかも…初見だ。白皇が後継者にしたい理由のひとつとして、その類まれな力を元老院に藤姫に披露させた。そんなことが出来るのは、普通はありえないのだが」
さすがは――
五皇がひとり白皇の後継者候補だった、天才各務久遠…ということか。
悔しいけれど、その力は認めねばならないか。

