シンデレラに玻璃の星冠をⅢ





「無効…とは違うのか?」

ふと思い返した、久涅特有の力。


「無効は一方的にひとつの力を打ち消すもの。相殺はふたつの力がぶつかった結果、プラスマイナスゼロとなり力を消失するもの。似て非なるものよ」


俺には初耳だ。

いつそんなことを調べられていたのか。

紫堂から追い出される前に、虚弱だった幼い俺が治療目的で何度もされた採血がそうだったのだろうか。

今は憶測でしかないけれど。


この男の言うことが真実ならば、遺伝子が相殺しあった為に、幼い頃の俺は紫堂の力に目覚めていなかったということになる。

確かに俺は、紫堂の力に目覚めたのは、緋狭さんに師事してからのこと。

正直、自分の力を初めて目の当たりにした時、腰を抜かしそうになる程驚いた程で、それまで、そんな力があるという兆候すらなかったんだ。

だからこそ、弱い俺は、芹霞に守られてばかりいたわけで。


――坊、闇の力を目覚めさせよ。


芹霞を守るのに必要のものならばと、あの時の俺は何の躊躇も疑問もなく、絶対的にそうしなければならないと、体の全細胞を奮い起こして、緋狭さんの修業についていた。

緋狭さんがやれと言うのなら、俺は何が何でもそれに従う。

緋狭さんこそが、あの時の絶望の中の希望だったから。

そのスタンスは今も変わらないだろう。


それでも。

もしこの男が言うように、俺の中に異能力を相殺する…Ω遺伝子が存在するのだとしたら。


異能力が目覚めた今の俺は――。


「俺の中の相殺する…Ω遺伝子は、何故力を弱めた?」


異能力が目覚めたとなれば、Ω遺伝子の力が働いていないということ。

Ω遺伝子というものは沈静化するのか?


「α遺伝子の効果だけが体に残っている状態なら、その後の…今の俺は、はっきりとそうろ…煌、老いる方だ」

「お、おう…。何でその言葉に弱いんだろう、俺…」


煌は真っ赤な顔で、頭を掻いた。


「何で俺は早老症を発症しない?」


仕切り直して言った時、男は嘲るように笑った。


「突然変異をしたんだ、お前のΩ遺伝子は。いや、正確に言うと…突然変異した一部のΩ遺伝子が、α遺伝子と結合を始めた」


「櫂…俺よく分かんねぇ…」


「そうろ…老けない遺伝子が新たに生まれたらしい。ということか?」


頷く男に、俺は疑問をぶつけた。


「久涅は無効の力を持っている。俺のように第二の…Ω遺伝子に相当する遺伝子として、それは存在してなかったのか?」

「していない。Ω遺伝子の力が顕現されるとは限らない。現にお前は相殺の力はないはずだ。

無効の力は遺伝子に関係ない久涅の後天性の力。お前で言えば、風の力に相当する」


俺の風の力は、守護石の恩恵がなくとも使える、主力である闇の力の副産物。

ならば久涅にとって主力とは?


「久涅の本来の力は…闇の力だ。血染め石の、な」


俺は目を細めた。