「お互いに、酷い顔になりましたね」
止まない雨はない。
使い古された言葉なのに、実感できた人はどれだけいようか。
顔を上げれば、ああ、確かに、酷い顔で。
「笑うなよ、変態」
口元を緩ませる奴を、もう一度殴ろうとしたが――手を取られた。
濡れたハンカチ――公園の水飲み場で濡らしてきたか、寒い時期とあってよく染みる冷水だった。
剥(はが)がれた爪、剥(む)けた皮。それら一つ一つを労りながら、最後に絆創膏を貼られた。
「お前、ハンカチティッシュ常備しているタイプだろ」
「手本となる方が、とても素敵な方でしたので」
絆創膏を貼られた手は、もう拳を握れない。
「お節介が……」
「それもまた、母親似なもので」