声帯が閉じたよう、声がまったく出ない――出してはならない、何かが崩れてしまうから。


「……っ」


行け、と言葉にもならないはずなのに、伝わった。


立ち上がった少年は、縮こまる子を置き去りにする。


夕日で出来た影法師でさえも、犬童の体を通りすぎた。


「……、あぁ」


落胆した、という感情さえも認めたくない。


いつも通りに、ムカつく奴を殴ったら、更に気にくわない奴がいた。今日は、そんな変わった日で――明日はきっと、“いつも通りだけ”だ。


斑点が重なりあって、大きな染みとなる。土が焦げ茶に――雨も降ってないのに、土砂降りだ。


嫌な日。
でも、ほら、よく言うじゃないか。