男たちからではない、抑えきれなくなった衝動――キレた自分を止めてくれた。
あのまま続けていたら、取り返しがつかないことになっていただろう。
殺意だけでは人を殺せない。だったら、どんなに憎んでも未遂で終わったのに、皮膚の破けた指が自暴自棄の恐ろしさを感じさせる。
もうあの時点で過剰防衛だろうし、渉がこうして警察来る前に現場から離れたのは正解だった。
律儀にランドセルも持ってきたあたり、渉は誰よりも冷静で賢いだけ。
犬童の風当たりが悪くならないような配慮(逃走)は、また明日から、犬童が学園に通えることを意味するが。
「もう二度と、オレに関わるんじゃねえっ!」


