「犬童くん……」
「だったらもう、八つ当たりしかねえじゃねえか。殴ってもいい変質者なんて、うじゃうじゃいんだから……」
もうオレみたいな奴が生まれないように、だなんてきれい事は言わない。
歪んでいた、壊れていた。
自覚しながら、止められないんだ。
忘れたい過去とは、忘れられない思い出。どうあっても拭えないこの毒を吐き出すには、クズ野郎を痛め付けることでしか緩和しない。
殴って楽しいか?
泣く奴は爽快か?
血ヘド吐く奴見るのに、ハマったか?
――そんなクズに成り下がっていると、分かっていた。
なんて惨めな。
けど、他に生き方が分からない。
八つ当たりとはつまり、自分勝手。
ああ、こいつは何にも悪くない。むしろ、助けてくれた恩人だ。


