その謝罪は、犬童の意に反するがための声。
「ばっ……!」
腹に腕を回され、抱えられる。――いや、抱えられるよりも不恰好な、だっこだ。
犬童のつま先を引きずりながら、無理矢理現場を離れる少年。非力だと思っていたのに、火事場の馬鹿力でも発揮したか――ああ、つまりは。
「邪魔します、殴りたくなったら僕にあたっていいですから」
でないと、犬童がずっと深淵を漂うと思ったからこそ、引き摺り出した。
「歪んでいた、壊れていた。――それでも、“取り返しがつかない場所にいるわけじゃないから”」
――どうしてこいつは、“必死”なんだ?


