八つ当たりを、晴れない憂さ晴らしを。 朱に染まる眼は相手の返り血か、目が充血しきっているか。 助けなんか来ない。 ブザー鳴らしても、みんな、“危ないことには首を突っ込みたくない”から。 ――だから。 「犬童くん」 殴る手を止めるこいつが、理解できないんだ。 「なんで、“ここ”にいるんだ、ょ……」 掠れた声の訳など知らない。邪魔だと喚きたいのに、拳を止める手が力強いんだ。 八つ当たりさせてくれ。 「どっか、行け……!」 “豚に抱かれた子供なんかに、触るなよ”―― 「……、すみません」