「なに、おまえ?」
「邪魔していい雰囲気じゃないの、分かる?」
倒れる犬童に近づくことを、はいそうですか、と許す男たちではない。
壁を作るようにして、犬童と渉を遮蔽し、にやにやとガキ大将のような幼稚な笑みを浮かべる。
「行けよ、見逃すから」
「警察呼んできなぁ、俺たちはその間に逃げるからー」
犬童を連れて、とは続かずとも、煽る口調で受け取られる。
もっと、言えば。
「ヒーロー気取りたきゃ、日曜の朝に出直しなっ!」
ここで目撃者(渉)の口封じをせずに見逃す気もなかった。
間髪入れずの右ストレート。ただの殴りで、構えもなっていない暴力だろうが、成人男性の力前にしては、小柄な少年は非力。


