(軟弱になってんなよっ、ぶちかましたい奴が、そこにいんのにっ)
心の叫びばかりが気張っても、裏腹。公言通りに、男が倒れた犬童にスタンガンを当てようとして――
「今すぐ、彼から離れてください」
目を、疑った。
出来すぎたこの演出――しかし、よくよく考えれば、おかしな話ということもない。
――待ち伏せ、していたんだ。
「わた……っっ」
ここを通るからと待っていたその少年――黒づくめの彼が、スタンガン持つ男に動じず、早足でこちらに向かってくる。
無表情しかなかった顔に怒気が隠るよう。かつかつと踏み鳴らされた足が、憤りを表している。


