振り向き様に正拳をかざす犬童であったが、腹部に鋭い痛みが走った。
「いっ」
刺されたかと思えば違う。
痛烈が腹部から、蜘蛛の巣のように広がり、体を呪縛する。指先すらも動かせず、弛緩した足は立つことを放棄。前のめりに倒れ、うつ伏せ状態。そのまま意識を失っても良かったが。
「ちく、しょうがっ」
とり留めた執念(意識)の糸。
ここで気絶してしまえば、目が覚めた時に死にたくなる現状が待っている。
「うっわ、普通、気絶すっとこだろ」
「タフなガキだなぁ、おい、気絶ちたほうが、らくでちゅよー」
ゲラゲラ笑う男が犬童の背中を踏みつける。
痛みはないが、胃が潰された圧迫感で気分を害す。本来ならば、こんな奴ら造作もないのに――弱いならば弱いなりに、別の物で補っていた。


