一般的に言えば、背負い投げ。しかして、投げた当人は、男の腰元もない身長の子供のはずで。
「こんぐれえで、尻の穴すぼめてんじゃねえよ、『おにいさーん』。女が暴漢撃退する護身術流行ってんなら、子供が大人投げるぐれえ余裕なの。分かんない?ぷっ、オレよか長生きしてるくせして、オツム足りてねえんだね。
飾りの頭ん中にてめえの先走り汁でも与えとけや、早漏。ガキにビンビンしてんじゃねえよ、だらしねえ下半身の栓代わりに針突き刺すぞ、変質者」
「く、てめっ」
犬童の猫かぶりを認識するなり、投げ飛ばされた男が立ち上がる。
そのまま拳を作ってみせるが――ふと、卑しく笑う。
なに、とは言わない。にやついた目は、“犬童の後ろに向けられている”。


