「そう。じゃっさー、お兄さんたちと来ない?」
「俺ら、君みたいな家出人を保護する組合に入ってんだよねぇ」
路地先の道路にワゴン車が停まっているのを見た。
こいつらのとは言わずもがな、犬童の腕をグイグイ引くあたり、あの車に早く乗せたいらしい。
人通りはない。
ないからこそ、ああ。
「ヤりやすいじゃん」
「あ?」
犬童の言葉を聞き返した矢先、男の片割れが倒れた。
脛に容赦ない蹴りを入れられたならば誰でも悶絶する。
ただし、驚く他なかった。
「な、おまえっ――」
狼狽する前に、犬童を掴む男の腕が、“グキリ”と逆手となる。
骨折はしていないが、靭帯が捩れた。悲痛を上げる間もなく、男の体は山なりに投げ飛ばされる。


