我ながらに惨めだと、犬童はランドセルに手を伸ばそうとした時、長い影が重なった。
「どったの、お嬢ちゃん」
「苛ついてるみたいだけど、もしかして、家出とか考えてんの?」
ちゃらけた気配は背後に。
「……ハッ」
“そうこなくっちゃな”とほくそ笑み、振り返った犬童は持ち前のエンジェルスマイルで、男たちを見た。
若い、褐色の肌に色の抜けた髪。下卑た笑みもあってか、この二人組が犬童に友好的気持ちを持っていないことは一目瞭然。
――ああ、この目だ。
108回以上は見てきた、人間悪にして。
「うん、家出したいの。ママがね、いっつも怒るから、困らせたいんだぁ」
自身の“捌け口”。
――ヤられる前に、ヤっちまえ。
“すっきり、したいんだ。やり返す奴が目の前にいないから、代替で我慢してやる”。


