〜自宅〜
〜リビングルーム〜


俺と友美は宿題、試験、特別に私用がない限り、下のリビングルームを使う。

口で言えない淋しさがあるのだろうか‥。


『今日も1日疲れたな』

『授業中、寝てたくせに。いびきまでかいて』

『鼻炎気味の時は、よくするみたいだな。気をつけるよ』

『こっちまで恥ずかしかったよ』

TVは相変わらず、つまんないニュースばかり。
面白いニュースは、この国にはないのだろうか。


『テレビ、何か見るものある?』

『一応、刑事もののドラマを見るけど。クライマックスシーンあるし』

『実際は、汚職事件の数が凄まじいけどな』

『現実を言わないでよ』


俺は歴史小説を手に取り、適当なページをめくり、目をやる。

…‥


『………』

あの後、藤さんは元気を取り戻しただろうか…

…‥


『‥う〜む、読書に集中できん』

『兄さんにそんな難しい本は無理だよ』

『別に難しくはないさ。今日、藤さんと会ったんだ』

『藤さん…?』

『調子が良くなかったみたいで、家まで送って帰ったんだ』

『…でも藤さんと知り合いだったの?』

『いんや、今日が初めて』

『じゃあどうして一緒に‥』

『体調が良くなかったみたいだからね、心配だったから一緒に帰った』

『お節介な兄さん』

『困った人は、中々ほっとけないんだ』

『どうせ、藤さんって人が可愛いかったからでしょ!』

『図星だ♪』

『…もう』

『でも可愛かっただけじゃないよ、俺が心配性なのは知ってるだろ?』

『まぁ、知ってるけど…』


俺は再び本に目をやる。

…‥


『………』
ふむふむ‥

TVに目を向けてた友美が、こっちに顔を向ける。


『‥ねぇ、兄さん?』

『…本の世界に入りかけたのに、何だよ』

『あっ、大した事聞く訳じゃないけど、藤さんと知り合うきっかけは何かなぁって。ほら、兄さんとは縁がなさそうだし‥』

『縁がないって随分な物言いだぞ』

『…でもそうでしょ?』

『………』

つまり、大した事であり気になるんだな。
俺は藤さんとの経緯を話した。

…‥


『告白されてたんだ…、モテる女性って大変ですね』

『けど、モテないよりはいいんじゃないのか?』

『うん…、でもモテて人気のある人は、何にでも注目されちゃうよ。小さなミスや発言にも注目され、的外れの行動を起こすと非難の噂が立つし。モテるから幸せなんて考えるのは、単純すぎるよ』

『おお…、そうだな』

たまに本より、友美から指摘を受けて、学習する機会がある。

こうして見ると、友美も苦労に直面し、色んな勉強をしてるんだな、と思ってしまう。


『友美、参考になるよ』

『でも、モテる人の悩みははっきり解らないよ。本人に聞かないと』

『俺も正確にわかんないよ。モテる人の悩みなんて』

確かに、全然わからない。人の一生には、モテる時期が来る、というけど真相は闇の中だな。


…‥


『友美、そろそろ寝ようぜ。寝坊するぞ』

『…兄さんがそれを言いますか!』

『先に寝てるよ、おやすみ〜』

『おやすみなさい』


自分の部屋に戻り、机に読み掛けの本を置き、ベッドに倒れこむ。
満足のいかない一日をようやく終えた感じだ‥。

さぁ、就寝するべ。

明日こそ全科目、自習になるように。明日こそ全科目、自習になるように。明日こそ…。

『ZZZ…‥』


〜翌日〜

『くぅ〜、くぅ〜』

『兄さん、朝だよ』

『………』

『兄さん!』

『………、ともみ?』

『やっと起きた、寝坊助さんはどっちなの?』

『寝坊助の称号は頂くから、俺は寝坊助になる』

俺は開き直る。
基本、眠たい時は甘えん坊みたいになる。


『‥ねえ、兄さん?』

『ねむいのだー』

『兄さんの好きな著者は、睡眠に貪欲になる事が勧められてるのですか?』

『うっ』

急所をつかれた。
儒学の孔子に怒られた、感覚を覚える。


『違う!、ホンのジョークだ!』

バッと起き上がる俺。


『…目覚まし時計より効果があるんじゃないですか?』

『君主は姿勢を正すもんだ。よし、朝飯食って学校行こうぜ』

『私は風紀委員の仕事で今から学校へ行くから、悪いけど…』

『そっか、いいよ、気をつけてな』

『うん、兄さんも遅れない様にね』

部屋を出る前に、軽く手を振って下に行く。


……


『モグモグ…』

調理パンをほうばる。
昼休み前に腹が減らないように、しっかり食べておこう。

満腹状態だと授業中、眠くなりそうかな…。


『………』

本当に、俺の頭は常に回転する…。