「俺も楽しかったよ」
課長の優しい声が聞こえて、気が付けば向かい合わせになっていて。
「綾のことやこれからのこと...どうするのが一番いいのか、帰ったら一緒に考えよう。不安にさせてごめんな」
頬に触れて真っ直ぐな眼差しで私を見ながら課長が言う。
「次に行きたい所考えておけよ」
次...。どこでもいい。あなたと二人なら。
けれど、そんな日は...もう来ない。
「愛してる」
私の耳元でそう囁く彼に、胸が...心が震えた...。
課長がゲートを通り、飛行機に向かって通路を歩いて行く。
途中で立ち止まり、振り向いた課長は、
「また連絡する」
そう言って、手を挙げた。
胸に込み上げる衝動。溢れ出しそうになる涙。
まだ泣いたらダメ。
課長に変に思われる。
笑わなきゃ...。
私の笑顔が好きだと言ってくれた貴方の為に。
最後は泣き顔ではなく、笑顔を見てほしいから。
だから、笑うんだ。
ゆっくり息を吸い、目を閉じて吐く。
ゆっくり...ゆっくりと...。
震える口元。少しでも口を開けば、必死に抑えている感情が一気に噴き出しそうで。
課長に唇の震えを悟られないように、笑顔を作る。
瞬きをすると、目に浮かぶ涙が溢れるだろうから、出来るだけ我慢する。
そして、私も課長に手を振り返す。
とびきりの笑顔で。
心の中で『さよなら』と呟きながら...。
