うーん、どうすっかなあ。このまま真っ直ぐ帰るのも味気ないし、方向は一緒だしな……

という事で、俺はオッケーの返信をした。


いつもの行き慣れた駅で電車を降り、やはり歩き慣れた道を歩きながら、俺は杏里さんのアパートへ向かった。その間に考えたのは、杏里さんの事ではなく吉田栞の事だった。

彼女に関し、結果は明らかに失敗だ。せっかく出くわした標的を、みすみす逃しちまったのだから。しかも、再度接近するすべもないままで。


あの時までは、概ね失敗ではなかったと思う。つまり、吉田栞にキスするまでは……

それまで、吉田栞は俺に結構関心を持っていたと思う。仮にそれは俺の勝手な思い込みだとしても、少なくても嫌われてはいなかったし、あまり警戒されてはいなかったように思う。状況的には警戒されて不思議はないし、それが普通だとは思うが。


『松本さんのバカ!』かあ……

俺は吉田栞を怒らせ、泣かせちまった。完全に嫌われちまったな。