すると「おお」という声が聞こえ、私が驚く間も無く、榊原さんが向いた先の植木の陰から、黒い服装の、ひょろっと背の高い男性が現れた。

ま、松本さん!?

その人は紛れもなく、私が会いたかった松本さんその人だった。


松本さんは、まっすぐに私を見てくれた。あの日のような険しい表情ではなく、ちょっとはにかんだような、例えるなら、子どもが悪戯とかをして、それが大人にばれて気まずい、みたいな、そんな表情で。なぜかは分からないけど。


松本さんって、こういう表情もするんだ……
ちょっと可愛いかも。


私が松本さんに会釈しようとしたその時、まるでそれを遮るかのように、絵理が私の前に立った。