令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

一日の講義が終わった。


「なんで榊原さんは返事をくれないのかなあ」

「絵理のメールに気付いてないとか?」

「そんなはずないよ。だって、その前に自分がメールしてるんだから、その返事を待つでしょ? 普通は」

「そ、そうだよね……」

「やっぱり何か企んでるだわ、あの人」

「そんな、企むだなんて……」


榊原さんって、そんな人とは思えないけどなあ。


「ま、いいわ。会ってみましょう。はっきりさせなくちゃ、あたしの気が済まないもの」

「そ、そうよね? 行きましょう」


なんだかちょっと、怖い気もするけど……


「あら? 栞は行かなくていいわよ。あたし一人で行く」

「え、どうして?」

「だって、栞に何かあったら大変だもの」


その気持ちは有り難いのだけど、


「ううん、私も行く。絵理だけ行かせたら、私が心配だから」


と私は言った。それは本当の気持ちだけど、実はもうひとつ理由があった。それは……

もしかしたら松本さんに会えるかもしれない、という期待。正直なところ怖いけど、賭けてみたいと思った。