吉田栞はすぐに下を向いちまったが、俺は彼女の顔を見たくて、彼女の小さな顎に指を掛け、くいっと上を向かせた。やはり真っ赤な顔をしていた。熟れたトマトみたいに……


「み、見ないでください」


吉田栞はか細い声で、うったえるように言った。目は潤み、今にも泣き出しそうだ。


「あんた、もしかして、まだバージンか?」


ズバリそう聞くと、


「知りません!」


と言った。という事は、やっぱりバージンなのだな?


「やっぱりそうなんだ? ひょっとして、キスもした事ないとか?」

「それは……」


彼女は答えずに口ごもったが、俺は勝手に“ない”と判断した。実際は“ある”なのかもしれないが、どっちでも良かった。要は、この女はまだうぶだという事実。俺にとってはそれで十分だった。