栞の家に着いた二人は、ダイニングで栞が作ったパスタを食べている。


「ごめんなさい。私、こんなものしか作れなくて……」

「え? いやいや、うめえよ、コレ」

「ほんとですか!?」

「ああ、旨いと思うよ」


料理にまったく自信のない栞は、例え社交辞令でも悠馬が“旨い”と言い、モリモリと食べてくれる事が嬉しかった。


「あ、そうだ……」

「ん?」


不意に栞は立ち上がってその場を離れると、手にビールとグラスを持って戻って来た。


「栞、それって……」

「パパのをちょっと拝借しちゃった」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫よ、これくらい。はい、悠馬さんはビールはお好きでしょ? 合コンの時、飲んでたから……」

「まあな」


悠馬が持ったグラスに、栞はビールを注いで行った。ぎこちない手付きで。


「おまえは飲まねえの?」

「私はまだ未成年だから……」

「ああ、そうだっけな? じゃあ、わりいけど……」


と言って、悠馬はビールをゴクリゴクリと喉に流し込んだ。


「ハアー、うめえ」

「そんなに美味しいですか?」

「ああ。最初の一杯は特に旨いよ。栞も飲んでみろよ?」

「えー? 私はいいです」

「そう言わずにさ、ちょっとだけ。旨いから……」

「じゃあ、ちょっとだけ」


栞は悠馬からグラスを受け取り、恐る恐るという感じでビールをほんの一口飲んだ。


「に、苦い……。悠馬さんの嘘つき!」

「そうか? ごめんごめん」


と謝りながらも、顔をしかめた栞が可愛くて、つい笑ってしまう悠馬だった。