栞は一瞬キョトンとした顔をしたが、次の瞬間にはニコッと微笑み、


「そうしましょう?」


と言ったのだ。あまりに呆気なく同意されて、むしろ戸惑う悠馬だが、一方の栞は早口に喋り始めた。


「よかったら家のお風呂に入りませんか? 今夜は家に私しかいないんです。だから、出来れば悠馬さんにはそのままお泊まりしてほしいんです。私、一人でお留守番ってした事がないから、心細くて……」


言い終えた栞の顔は、夕闇の中でもはっきりとわかる程に、真っ赤だった。

栞は、なぜ悠馬が急に“風呂”と言ったのかは見当もつかなかった。と言うより、それを考えるよりも早くそのワードに飛びついたのだ。悠馬を家に誘う絶好のチャンスだから。

また、“風呂”というワードは、絵理からそそのかされた“湯上りの女”に直結するワードでもあったから。


予期せぬ栞の提案に、「いいのか?」としか言えない悠馬だったが、もちろん彼に異存はない。二人しかいない家ならば、ホテルと大して変わらないわけだから。