「栞ちゃんはな……生身の女の子なんだ!」


弘司は俺に向かってビシッと指を指して言ったが、それ程の事かあ?


「そんな事、わかってるよ」

「いいや、わかってないね、おまえは」

「はあ?」

「栞ちゃんはな、きっとおまえに抱かれたがってるはずだ」

「“抱かれたがってる”って、あの栞がかあ?」


栞を思い浮かべたが、どうしてもそんな風には思えなかった。確かに俺に対して従順なところがあるから、俺が強く望めばあの子は拒まないかもしれない。しかし自分から俺に抱かれたいなんて、考えるだろうか。あんな、子どものまま大きくなったような子が……


「例えばだ、キスした時の彼女はどうだ? 目を潤ませてうっとりとかするだろ?」

「ん……どうだったかなあ。忘れた」

「忘れただあ? なんだそりゃ?」

「しばらくしてないから、濃厚なやつは……」


別れ際に触れるだけのキスならしてるが、前みたいな濃厚なやつはずいぶんしていない。なんか、栞に申し訳ない気がして……


「おまえなあ。そんなんじゃ栞ちゃんに愛想つかされるぞ? 他の男に栞ちゃんを取られてもいいのか?」

「ば、バカ言うなよ。そんなのは絶対に許さない」

「だろ? だったら行ってこい。行って、栞ちゃんを抱いて来い!」


そう言って、弘司は俺の背中をバシッと叩いた。

なんだかよくわからないが、弘司に背中を押されたのは確かなようだ。やっぱり弘司は俺の親友、って事になるのかな。


とは言ってもなあ……。どうするよ、俺?