「栞のガードが固いとか固くないとか、そういう問題じゃねえんだ」

「ん?」

「“迷ってる”って言ったろ?」

「そう言えばそうだったな? じゃあ、おまえの問題か?」

「ああ。俺はあの子を傷付けたり汚したくないんだ」

「なるほどね。分かる気がするよ」

「分かるか?」

「分かるさ。栞ちゃんって、お人形さんみたいだもんな? 出来ればガラスケースにでも入れて、そっと見てたいって感じだろ?」

「そうそう。おまえ、上手い事言うじゃねえか……」


弘司の表現はピッタリだった。正にそう。俺は栞を独り占めし、しかし手を触れず、そっと眺めていたかった。そんな事、出来るはずもないのだが。


「でもな、悠馬、おまえは間違ってる」

「え?」

「栞ちゃんは確かにお人形さんみたいではあるが、お人形さんじゃない」

「…………」