「絵理……その言い方はやめて?」

「え、どうして? 彼はあんたのヒーローじゃないの?」

「そうじゃなくて、悠馬さんの事を過去形で話すのはやめてほしいの。それじゃまるで、悠馬さんが死んじゃったみたいだから……」

「あ、ごめん。あんたは諦めてないんだもんね?」

「あたりまえでしょ!?」


あの時、悠馬さんは瀕死の重傷だったけど、何とか病院まで持ち堪えてくれた。そして輸血と緊急手術をしてもらって命は取り留めた。でも……


あれ以来、意識が戻っていない。


「進展はあるの?」


と絵理から聞かれたけど、私は首を横に振る事しか出来なかった。

悠馬さんはずっと病室で寝たきりで、点滴で命を繋いでいる状態だ。手術は成功し、脳に損傷はないそうだけど、意識が戻るかどうかは、お医者様でもわからないらしい。


「絵理、悪いけど今日も真っ直ぐ病院へ行く。もし悠馬さんの意識が戻ったら、その場にいたいから……」

「うん、わかった。がんばってね?」


私は絵理と別れて悠馬さんがいる病院へ向かった。今日こそ悠馬さんの意識が戻りますように、と祈りながら……