「栞、帰ろう? きっとお父さんやお母さんも心配してるよ?」

「おい、お嬢さんは嫌がってるだろ? てめえの事なんかもう信用できねえんだよ」

「俺は君を騙してた、卑怯な人間さ。もちろん恨んでくれていいし、早く俺の事なんか忘れてほしい。それでいいから、とにかく今はここを出よう?」

「おい、いい加減にしろよ!」

「きゃっ」


俺はサブって奴に顔を殴られたが、それに構わず栞を見つめた。俺は怪我してもいい。死んでもいい。とにかく今は、栞をここから連れ出したいだけだ。



「悠馬さん。今日、私を好きだと言ったのも、お芝居だったのですか?」


栞が突然そう聞いてきた。今はその話をしている場合ではないと思ったが、栞の目は真剣だった。


「それは……」


何て答えようか、俺は迷った。もちろんあの言葉は真実だ。自然と俺の口をついた言葉だった。それをそのまま言うべきだろうか。それともあれは嘘だったと言い、栞から完全に嫌われた方がよいのだろうか……


「悠馬さん、後ろ!」


栞がそう叫んだ直後、俺は頭にガツンと強い衝撃を受けた。何が起きたのかはわからない。


「逃げて……くれ」


それを言うのがやっとで、すぐに視界が真っ黒になり、俺の意識は遠退いて行った。

その間際に俺は思った。天罰が下ったのだと……