「栞、なにバカな事を……」


いくらなんでも、こいつらといて安全だなんて、栞は何を言ってるんだろうか。そう思ったら、


「お嬢さんはバカじゃねえよ。お嬢さんはな、俺達と取り引きしたのさ」


サブって奴が口を挟んできた。


「取り引き?」

「そうさ。お嬢さんを無事に帰す代わりに俺達は金をもらう。かなりまとまった金をな」


そういう事だったのか……

栞がまだ無事だった事は、すごい奇跡だと俺は思った。あるいは幸運だったと。
しかしそうではなかったのだ。栞はおそらく助かる方法を必死で考え、その結果自分が令嬢である事を最大限に活かし、自ら危機を逃れたのだ。


「よくやったね、栞。よく頑張った……」


俺は栞の頑張りを心から褒め、同時に感謝した。栞にもしもの事があったら、俺は生きて行けないと思っていたから。