令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~

それは栞が発した、厳しい一言だった。


確かに俺は栞を騙し、復讐目的で彼女に近付いた。だが、いつしか俺は栞を本気で愛するようになっていた。それからの俺は、本心で栞と向き合っていた。

それを栞に言いたい気もするが、今更言って何になるだろう。どうせ俺達はもう終わりだ。二度と会う事もないだろう。であれば、栞は俺を恨み、嫌った方が早く立ち直れるはずだ。俺もその方が、気が楽だと思う。


「すまない」


だから俺は、そう一言だけ言った。謝罪の言葉を。そして、


「栞、帰ろう? 君はこんな所にいちゃいけない」


と言った。栞に恨まれても嫌われてもいい。とにかく今は、この場所から栞を助け出す事が先決だからだ。


「嫌です。もうあなたなんか、信じられません。あなたと行くより、この人達といる方がまだ安全な気がします」


ところが栞は、俺の言う事を聞いてくれなかった。