その男は当然ながら反撃をし、俺達は揉み合いになった。

俺は喧嘩というのは殆どした事がなく腕力に自信があるわけでもなかった。ただ、最初の一撃が効いたのと、早くこいつを倒して栞を助けたい、という強い気持ちのおかげか、夢中で闘った末にその男を倒す事が出来た。男は壁に頭をぶつけ、床にうずくまっていた。


俺は倉庫の中へ入り、事務所らしき部屋を突っ切ってその奥にあるドアを開けた。すると、薄暗い空間の中に白く浮かび上がる栞の姿が俺の目に飛び込んで来た。


「栞!」


その雪のような白さは、栞の裸体……ではなく、昼間も着ていた真っ白なコートの白だった。


俺は栞の元へ駆け寄り、彼女を抱き締めた。彼女は、泣いているようだ。おそらく怖い思いをしてたのだろう。可哀相に……


だが、コートを着ているという事は、まだ男達に乱暴されていないと思ってよいのだと思う。


「栞、無事なんだな!? よかった……」


半ば諦めていただけに、間に合って本当に嬉しかった。俺は神様に、この奇跡を感謝したいと思った。