20分弱程でタクシーは目的地の倉庫に着いた。俺は十分な札を運転手に渡し、「釣りはいらない」と言ってタクシーを飛び出した。


その倉庫の扉には、当然ながら鍵が掛かっており、俺ははやる気持ちを抑えながら、扉を数回叩いた。


早く開けやがれ……


少しすると扉が無造作に開けられ、「いらっしゃい」とか言いながら、いかにもガラの悪そうな男が顔を出した。

そいつは、サブとかいう男とは違うと思う。栞をさらって行った奴でもなさそうだ。という事は、小林さんの腹を蹴った奴だろうか。


目付きの悪い、乱暴そうなその男は、俺の顔を見てギョッとした顔をした。てっきり杏里さんが来たと思ってたろうから、無理もないが。


俺は、そいつの顔を問答無用でぶん殴った。小林さんの仇の意味もなくはないが、こいつが栞に手を出した可能性を考えたら、怒りを抑える事が出来なかったのだ。