「きゃっ」


悠馬さんは、口の脇から真っ赤な血が流れ出したのに、それを拭おうともせず私を見つめた。そんな悠馬さんを、私はもう一度信じてみたいと思った。嫌いになんかなりたくない、と。だから私は、聞いてみた。


「悠馬さん。今日、私を好きだと言ったのも、お芝居だったのですか?」


と。


「それは……」


悠馬さんが戸惑いがちに言い掛けた時、突然、悠馬さんの後ろに男が現れた。それは小林さんに酷い事をした男で、頭から血を流し、怒り狂った恐ろしい形相で悠馬さんを睨み付けていた。そして、手に鉄の棒を持っていて、それを大きく振り上げた。


「悠馬さん、後ろ!」


と私が叫ぶのと、それはほぼ同時だった。

男は、悠馬さんの後頭部を目掛けて棒を振り下ろし、ドカッと音がした。


「逃げて……くれ」


悠馬さんはそれだけを言うと、ガクッとくず折れた。

私は悠馬さんの体を支えきれず、一緒に床に倒れてしまった。前のめりに倒れた悠馬さんの後頭部からは、たちまち真っ赤な血が流れ始めていた……